UV洗浄技術を利用しためっき前処理

UV照射で汚れを分解、めっき工程を

　紫外線（UV）が持つ清浄化や表面改質作用を利用した技術導入が半導体製造プロセスをはじめ、家電製品、自動車産業などで広まっています。また、水を使わないクリーンな技術としても注目されています。このUV照射による洗浄技術をめっき前処理の脱脂工程に利用することを目指した共同研究を進めた結果、大幅な工程の簡略化とそれに伴うコスト軽減が可能ということがわかりました

UV洗浄処理

環境に配慮しためっき前処理法の検討

　めっきの密着性や外観といった品質に最も悪影響を及ぼすものが素地表面の汚れです。めっき前処理では、この汚れを完全に取ることが重要であり、以前は非常に洗浄力の強い塩素系溶剤（トリクロロエチレン、ジクロロメタンなど）やフロン系洗浄剤が用いられていました。しかし、これらの有害性が問題となり、現在は水溶性の洗剤やアルカリ性溶液を用いた洗浄が主流となっています。さらに環境に優しい洗浄処理が求められており、水を使わない“UV洗浄”が次期洗浄法として注目されています。

ＵＶ洗浄の原理

　UV洗浄は、波長280nm以下のエネルギーが高いUV光を照射して、有機物汚れを分解除去する処理です。その原理を図1に示します。低圧水銀ランプを用いて大気圧下、空気中でUV照射を行うと、汚れ成分は酸化・分解されておもに二酸化炭素と水になり、揮発・除去されます。

図1 UV洗浄の原理

めっき前処理へのＵＶ洗浄の導入

　金属板に機械加工油塗り付けたものをサンプルとしてUV照射実験を行った結果、加工油が分解除去できることが確認できました。さらに、UV照射により脱脂したものにめっきを施して密着性を調べた結果、従来法であるアルカリ脱脂した場合と同等の洗浄効果が得られました。
　以上より、めっき前処理におけるアルカリ脱脂工程をUV洗浄１工程のみで代替できる見込みがつきました。図2に示すようなUV洗浄工程を導入した新工程の採用を進めています。

図2 UV洗浄を導入しためっき工程図