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酒造技術を活かした米乳酸発酵飲料

酒蔵の乳酸菌「米のしずく」

 伝統的な清酒製造技術である「生(き)もと」の酒母から取り出した生もと乳酸菌のプロバイオティクス効果を明らかにすると共に、その中から有益な効果を持つ生もと乳酸菌LK-117 を選抜してこれを活用した機能性飲料「米のしずく」の開発を行いました。


米乳酸発酵飲料『米のしずく』

酒造りと乳酸菌

 消費者の健康志向の高まりに伴い健康食品(機能性食品)市場は拡大を続けています。その中でも特に乳酸菌のプロバイオティクス効果(腸内の環境を改善して有益な作用をもたらす効果)が注目され、これを活用した機能性飲料が人気を集めています。
 一方、清酒製造業は阪神地区を中心に江戸時代から続く伝統的な地場産業であり、基本技術はほぼそのまま受け継がれています。その工程の中でも初期段階においてアルコール発酵を担う酵母を純粋培養する「酒母(しゅぼ)」の製造工程が重要であり、ここで乳酸菌を利用する「生(き)もと」と呼ばれる伝統的な製法が現在も行われています。

生もと乳酸菌のプロバイオティクス効果

 菊正宗酒造(株)の酒母から分離した20 種以上の生もと乳酸菌の中から免疫調節作用の高い生もと乳酸菌を選抜するため、培養動物細胞を用いた選抜実験を行いました。この結果、生もと乳酸菌5 菌株を選抜することができました。さらにアトピー性皮膚炎を発症した実験動物に生もと乳酸菌を摂取させ、皮膚炎の症状の時間変化を観察する動物実験を行い、最終的にLK-117 株と呼ばれる生もと乳酸菌にアトピー性皮膚炎の症状を緩和させる効果があることを突き止めました。


生もと乳酸菌LK-117

米乳酸発酵飲料「米のしずく」の開発

 生もと乳酸菌は米を栄養源とすることができるため、乳以外の原料を用いた新しいタイプの乳酸発酵飲料の開発が可能になり、乳アレルギーを持つ消費者でもプロバイオティクス効果が高い乳酸菌を摂取できます。
 次に米に着目し、抗酸化活性成分のポリフェノールが多く含まれ整腸作用が期待される難消化性デンプンも多く含まれるホシニシキを原料に決定しました。
 これまでの知見に基づいて菊正宗酒造(株)の保有する発酵技術を駆使して試作改良を重ねた結果、米乳酸発酵飲料「米のしずく」が完成、平成22 年4 月よりインターネット限定で発売を開始しました。米特有のやさしい風味を呈した乳酸発酵飲料として大変好評を得ております。

開発年度 平成20年度
事業、研究名 バイオ技術(共同研究)
平成20年度 経済産業省地域資源活用型研究開発事業
お問合せ先 ■菊正宗酒造株式会社
神戸市東灘区御影本町1-7-15
Tel.0120-939-522 
Fax.0120-939-533
http://komenoshizuku.jp/
■兵庫県立工業技術センター
環境・バイオ部 吉田 和利