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接着剤使わずフッ素樹脂とゴムを強力に接合

共同研究のポイント

 接着剤を使用することなく、簡単な2つの操作のみでフッ素樹脂(PTFE)とゴムを接合する技術を開発した。密着力はフッ素樹脂とゴムの界面で剥離することなく、ゴムが破断するほどの強力であり、潤滑油(シリコーンオイル)不要で滑り性に優れたフッ素樹脂-ゴム複合体が作製できる。


図1 プレフィルドシリンジの模式図

背景

 医療現場において薬剤の誤投与を低減するため、あらかじめ薬剤を充填させたプレフィルドシリンジという注射器の利用が進められています(図1参照)。シリンジバレルとガスケットとの滑りが悪いという問題があるため、「潤滑油を使用する」または「接着剤でフッ素樹脂をブチルゴムに張り合わせる」ことが検討されています。
しかし、潤滑油や接着剤が薬剤に混入することが懸念されるため、これらを使用することなく、ブチルゴムの滑り性を改善する技術が求められています。

研究内容

 商品名“テフロン®”で知られるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、フッ素樹脂の中でも最も水や油をはじく材料であり、他の物質との接合が極めて困難です。研究グループは、このPTFE「大気圧Heプラズマ処理」と「熱圧縮」という非常に簡単な2つのプロセスのみで(図2参照)、PTFEとブチルゴムを接合することにより、(1)潤滑油を使用せず、(2)接着剤も使用せず、(3)ブチルゴムの滑り性を改善する、という三つの要求を満たすことに挑戦しました。そして、ブチルゴムが凝集破壊するほどの接着強度を得ることができました(図3参照)。


図2 非常に簡単な新規な接合プロセス


図3 T字剥離試験(凝集破壊の様子)

 なお、高電力条件で処理されたPTFE表面では、プラズマ照射による脱フッ素化とそれに付随する過酸化物ラジカルの形成だけでなく、温度上昇に伴うPTFE分子鎖の運動性向上によって分子鎖同士の架橋反応が進行し脆弱層が強化された結果、PTFEとブチルゴム間の密着強度が大幅に増加したと推察されます。(図4参照)


図4 密着強度の大幅増加のメカニズム

開発年度 平成25、26年度
事業、研究名 材料技術(重点領域研究、共同研究)
平成25年度 重点領域研究
平成26年度 共同研究
お問合せ先 ■大阪大学大学院工学研究科
附属超精密科学研究センター
大阪府吹田市山田丘2-1
Tel.06-6877-5111(代表)
http://www.osaka-u.ac.jp/
■兵庫県立工業技術センター
材料・分析技術部 柴原 正文、長谷 朝博、本田 幸司