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レーザ加熱を利用した異種材料の嵌合

 機械部品としての軸の高機能化とコスト低減という観点から、耐熱性や耐食性の必要な部分だけ高価な材料を用いて他の部分は安価な材料と接合して利用することがよく行われています。従来技術としては、圧入、溶接ならびに摩擦圧接による接合がありますが、これらの接合による引張強度は、母材強度まで達していません。当センターでは、レーザ加熱を利用したステンレス鋼管の縮管に成功しました。さらに、実用的な寸法のステンレス鋼管とステンレス鋼棒のレーザ加熱を利用した嵌合に適用し、ステンレス鋼管の母材強度とほぼ同等の接合強度が得られました。さらに、熱特性が大いに異なり、軸の材料としてよく用いられるステンレス鋼管と炭素棒鋼の組み合わせにおいて、嵌合を試み、ステンレス鋼管の母材強度とほぼ同等の接合強度が得られました。


レーザー加熱方法

レーザ加熱方法

 試験片は、ステンレス鋼管に、炭素鋼棒を照射範囲と同じ50mm挿入し、ステンレス鋼管表面にはレーザビームの吸収率改善のため、カーボンブラックを均一に塗布しました。 レーザ加熱は、CO2レーザ加工装置を用いて、鋼管の内径の塑性変形量が大きく、試験片表面が溶融しない条件として、出力1400W、ビーム径12mmのCO2レーザビームを、移動速度2000mm/min、加熱するピッチ3mmとし、レーザ加熱を1回、2回、3回行いました。図1にレーザ加熱2回で嵌合した試験片を示します。


図1 レーザー加熱2回で嵌合した試験片

嵌合強度

 図2にレーザ加熱で嵌合した試験片の引張試験方法を、図3に引張試験の結果として標点間伸びと引張荷重の関係を示します。図より、レーザ加熱2回で嵌合した試験片の最大引張荷重は81.5kNで、ステンレス鋼管ならびに炭素鋼棒の最大引張荷重は、83.0kNならびに86.3kNです。このことから、レーザ加熱2回で嵌合した試験片の接合強度は、ステンレス鋼管の母材強度とほぼ同等になりました。


図2 引張試験方法


図3 標点間伸びと引張荷重との関係

異種材料(無酸素銅棒、アルミナ棒)の嵌合

 加工硬化した無酸素銅棒とステンレス鋼管とのレーザ加熱を利用した嵌合において、レーザ加熱2回で嵌合した試験片の接合強度は、加工硬化した無酸素銅棒の母材強度の53%になりました。
 アルミナ棒(Al2O3 99.5%以上)とステンレス鋼管とのレーザ加熱を利用した嵌合において、レーザ加熱1回で嵌合した試験片の接合強度は、アルミナ棒の母材強度とほぼ同等になりました。

開発年度
事業、研究名 金属加工技術
公開情報 岸本正:レーザ加熱を利用した嵌合に関する研究、精密工学会誌、Vol.81、No.8、pp.758-762(2015)
岸本正ほか:レーザ加熱を利用したかん合に関する研究-ステンレス鋼管と炭素鋼棒のかん合-、精密工学会誌、Vol.83、No.1、pp.78-82(2017)
岸本正ほか:レーザ加熱を利用したかん合に関する研究-ステンレス鋼管と無酸素銅棒のかん合-、精密工学会誌, Vol.84、No.1、pp.103-109(2018)
お問合せ先 兵庫県立工業技術センター
生産技術部 岸本 正

レーザ、加熱、ステンレス鋼、炭素鋼、銅、アルミナ、嵌合、接合、強度